★社協職員レポート 「神栖市社協の“お金の話”」 ~その3 平成23年度神栖市社協決算書を解説((1)会計単位と資金収支計算書)~
前回のレポートから1ヶ月以上経ってしまいましたが、前回予告したとおり、今回は「神栖市社協の決算書」を解説します。
平成23年度決算は、すでに評議員会の議決を得、本ウェブサイトでも公開していますが、「細かくて長い」「足したり引いたりが多すぎる」など、分かりにくい書類だと、多くの方に思われてしまっており、会計担当職員としても歯がゆい思いをしておりました。
そこで、以降のレポートでは、「神栖市社協の23年度決算書を見ながら」という設定で、社協の会計担当者の立場で、個人的な見解も加えながら説明します。そして少しでも社協の決算を身近に感じてもらえたらと思っています。
ただ最初におことわりしておきますが、「面白い話」かどうかは判断が分かれる内容だと思います。しかもかなり長文で、果てしなく続
きます。それでも興味のある方は収支決算書のPDFファイルを横に開きながら、見て下さい。
早速ですが、まず、表紙の次のページ(P.59)「平成23年度 資金収支計算書総括表」をご覧下さい。
この表は、平成23年度中の、神栖市社協の全ての収入と支出の結果を、会計単位・経理区分単位でまとめ、法人全体の収入決算額と支出決算額を明らかにし、差引剰余額(当期末支払資金残高)を導いたもので、決算額は、この後説明する「資金収支計算書内訳表(一般会計P.65~70、特別会計P.83~85)」から抜き取っています。
この中で「会計」とは、収支計算や財産の管理を行う単位のことで、神栖市社協では経理規程第4条で「一般会計(法人運営及び定款に記載された社会福祉事業を一括)」と「特別会計(定款に記載された公益事業,又は特段の定めにより会計を分けなれればならない社会福祉事業)」が設定されています。
現在神栖市社協が行っている事業は全て「社会福祉(を目的とする)事業」ですが、一部、法人税法上の「収益事業」に該当するものについては区分経理が義務付けられていることから「公益事業特別会計」として区分けをしています。
さらに、各会計の中には「経理区分」が設けられ、事業の種別や内容により収支計算を区分することで、事業ごとの収支、資産や負債の状況を明らかに出来るようになっています。
経理区分設定は各社協ごとに経理規程の中で定めることになっていて、神栖市社協の経理区分構成は右図の通りです。
それでは、決算書P.60「一般会計資金収支計算書の説明をさせていただきます。
「資金収支計算書」とは、企業会計における「キャッシュフロー計算書」に近いものです。現金・預金等の「(支払)資金」が、どのような名目で入って(収入)、どのような名目で使われ(支出)て、いくら残った(支払資金残高)のかを「経常活動」「施設整備等」「財務活動」ごとに区分して表記する計算書で、社会福祉法人が作成しなければならない決算書類のひとつです。
また資金収支計算書には「予算統制」という大きな役割もあります。
民間企業と違って、社協などの社会福祉法人には国、県、市町村から「補助金」「委託金」という形で「公のお金(税金)」が多く投入されています。さらに社協には「会費」「寄付金」「共同募金」など、直接市民の皆様から寄せられる「お金」もあります。どれも社協にとって大切な、貴重な「お金」です。
これらのお金は全て、「こういう事業に使いたい」という社協の事業計画に対して、行政や市民の理解と協力のもとでいただいたものです。年度が終わったら「いくらもらいました」「こう使いました」という報告はもちろん、「計画(予算)どおりに執行できたのか」「違う名目での使用はないか」「必要以上に使いすぎていないか」といったチェックが極めて重要になります。このチェック作業が「予算統制」というもので、社協にとっての「資金収支計算書」の必要性のほとんどはこの部分にあります。
では改めてP.60から。この計算書はP.64まで続き、一般会計内の5つの経理区分でそれぞれ発生した収入と支出が全て勘定科目ごとに合算され、予算額との対比(差違=予算額-決算額)で実績を表記しています。
ここに登場する勘定科目、及び大・中・小区分の科目設定は、全国の社協が統一して使用しているもの(※)です。一部の科目には市町村社協独自に設定したもの(○○受託金収入など)もありますが、細かい科目設定が義務づけられているため、自ずと科目ごとに使用できる範囲は制限されます。
1行目から始まる「経常活動による収支の部」には、年度中の社協活動に伴う事務・事業のほぼ全てが集約されています。23年度は収入、支出ともに計画(予算)を5%程度下回る決算となりました。
収入部門で「経常経費補助金(P.60の11行目)」「介護保険収入(同頁最下行)」の減収に併せて支出を抑えたこと、また、年度当初は東日本大震災の影響で休止中だった事業がいくつかあり、一部の事業費が執行できなかったことなどが対予算減の主な理由です。
介護保険収入の減収については、居宅介護支援事業、ホームヘルプサービス事業所ともに、市内の民間サービス事業所の充実度合いに合わせ、社協が担う範囲を減少させているためで、今後も独立採算を維持できる範囲で、ミニマムサービスの確保に努めていきます。
P.63の6行目から始まる「施設整備等による収支の部」では、土地、建物、自動車などの固定資産(社協では1件あたりの取得価格が10万円以上の資産等を「固定資産」としています)に関して、その取得や廃棄・売却などに伴い年度中に社協が支払った、あるいはもらったお金がいくらだったかを集計する収支部門です。23年度は自動車を2台購入、業務用パソコンを7台購入しましたので、その購入費用が「固定資産取得支出」に表記されています。予算に対して差違が生じた(44万円ほど残っている)のは、予算積算時よりも少ない費用で購入できたということです。
通常、固定資産を取得した場合は「資産」としての貸借対照表への計上と、耐用年数に応じた毎年度の減価償却費計上が必要な(というか、この仕訳のみで良い)のですが、資金収支計算書は「現金(預金)が動いた」かつ「予算を伴って支出(収入)がされた」ことを全て記録として表す計算書類なので、計算書には、実際に動いたお金(取得費用)のみが表記され、資産の減価償却などは別の収支計算書(事業活動収支計算書)で行われることになるのですが、これについては後で説明します。
次の「財務活動による収支の部(P.63の12行目以降)」ですが、ここは、経常活動や施設整備にかかる「支払資金」を、通常の活動とは別に調達したり運用した時の収支が集計されます。
具体的には「借入金」「有価証券の取得・売却」「積立預金の積立・取崩」などがあった時にその金額が表記され、23年度は積立金の取崩と積立がそれぞれ1件ずつありました。社協の積立金は現在「福祉活動基金」「退職共済積立預金」「財政調整積立預金」の3つで、積立金の残高は貸借対照表(一般会計。P.80)に記載されています。
ここまでの3部門の収支を全て合算して「当期資金収支差額」を導きます。P64下から3行目に記載されていますが、この決算額が「△7,866,868円」。23年度は、収入決算額を支出決算額が上回る「支出超過」となりました。
前年度決算時の繰越金である「前期末支払資金残高(P.64下から2行目)」を加え、最終的に翌24年度へ繰り越すお金「当期末支払資金残高(P.64最下行)」は「23,469,363円」。これが、23年度一般会計資金収支計算の結果です。
この残高は23年度収入決算額の8.64%にあたりますが、一般的に市町村社協でこれまで残高の目安とされていたのは「前期末支払資金残高も含めた、収入合計の10%(これを越えると、繰り越しすぎ)」、あるいは、継続的な支払資金確保という点から「経常活動支出決算額の2ヶ月分(たとえば介護保険、自立支援費収入は請求から入金まで2ヶ月かかることなどから。23年度神栖市社協決算額(精算金支出を除く)で換算すると29,119,562円)」などで、このあたりのラインを参考に、収支バランスの妥当性が分析されます。
ただこれはあくまでも目安で、財源構成の中で補助・受託金割合が高ければそれほど残高は発生しませんし、自主事業割合が高いところは一定の残高を維持しないと翌年以降の事業運営に差し支えが出る場合があります。事業割合、財源構成は、市町村社協によってもかなり違いますので、一律のラインで判断することは適切でないかもしれません。
P.65からP.70までは「資金収支計算内訳表」となっています。ここは、23年度の一般会計資金収支決算額を経理区分別に分解して表記した、文字通りの内訳書です。なお内訳の中に「デイサービス事業」「福祉作業所事業」がありますが、この2つは平成21年度より特別会計に移行しており、金額表記はありません(会計ソフトの事情で削除が出来ない‥‥)。
最も多くの数字が出てくるのは一番左の「社会福祉事業経理区分」です。社協の本部・中心的事業はほとんどここに集約されますので、収支計算の規模も一番大きくなります。財源構成も会費収入、寄付金収入、補助金収入など、社協の根幹を支える科目が勢揃いしていますが、翌年度以降の支払資金確保の観点から毎年一定額を繰り越しています。
「居宅介護支援事業経理区分」以右は、事業を単位として個別に設けられた経理区分になりますので、数字の登場箇所もまばらになります。
「居宅介護支援」「ホームヘルプサービス」の2つは、介護報酬、自立支援費収入での独立採算運営、収益が出た場合は非収益部門へ充当(具体的には、社会福祉事業経理区分への繰り出し)されているか、を明らかにするために区分経理しているものです。なお両事業ともいわゆる収益事業(居宅介護支援事業、ホームヘルプサービス事業は、税法上の「医療保健業」)に該当しますが、社会福祉法人が実施する医療保健業については非課税とされており、一般会計で処理しています。
「基金積立事業」「退職手当積立事業」の2つは、基金の果実運用、将来の退職金支払いに向け、他と区分して資産管理を行うことを目的に設けられた経理区分です。資金収支と併せて財産状況を確認(積立金、引当金など)するための「貸借対照表(後で説明します)」作成も重要になります。
既にかなりの文章になってしまっていますが、ここまででようやく一般会計の、資金収支計算書の説明が終わりました。次のページは「一般会計 事業活動収支計算書」となっていますが、ここは一端飛ばして、「公益事業特別会計 資金収支計算書」を説明します。該当ページはP.81から、内訳表も含めP.85までです。
この会計は、神栖市社協事業の中で、法人税法上の「収益事業」に該当する3つの事業について、一般会計と分けて収支計算を行ったものですが、計算書の構成、勘定科目設定は、一般会計と同一です。
23年度に発生した収入は「受託金収入(指定管理料:請負業)」「事業収入(福祉作業所での売上、自動販売機設置手数料)」「利用料収入:物品貸付業」のみ。一般会計と違い、いずれも当年度の事業運営に全て使われることを前提に得た収入ですので、経常活動の中で全て執行(支出)され、支払資金残高はあまり出ません。23年度も「施設整備等による収支」「財務活動による収支」は発生せず、当期末資金残高はゼロで収支計算がされました。ただ、残高がちょうどゼロとなったことには、次の2つの理由があります。
一つ目の理由は、指定管理者として神栖市からもらう指定管理料(受託金収入。P.81の3行目に記載)を、支出決算見込み額に合わせ減額したことです。具体的には、収支計算書「差違」欄記載額が減額分で、支出部門においても、予算(当初計画)を大きく下回る実績となりました。
平成23年度は東日本大震災の影響で、指定管理業務内容を一部変更せざるを得なくなりました。特にデイサービスは事業運営に重大な支障が生じ、神栖市と協議の上、事業計画、指定管理料見積の内容を修正し、想定決算見込額に合わせて年次の指定管理料を減額変更しました。
続いて二つ目です。
社会福祉法人などの公益法人に対する税法上の措置として、収益事業により得た所得の中から自法人が実施する非収益事業のために支出した金額は、税法上の収益事業に係る「寄付金」とみなし、損金処理できる制度(みなし寄付金規定。法人税法第37条第4項)があります。
神栖市社協では毎年度、この規定に基づいて、年度中の所得を一般会計へ繰り出し、一般事業財源を確保していますが、これにより収入決算額と支出決算額との差違がなくなり、収支差額はゼロとなりました。
なお「みなし寄付金規定」には上限があり、学校法人や社会福祉法人の場合「当期所得の50%か200万円の多い金額。(法人税法施行令第73条。これを超えた金額については法人税の課税対象)」とされていますが、23年度の繰り出し金(会計単位間繰入金支出)は1,970,681円です(P.82の17行目に記載)。
公益法人とは、たとえ指定管理者として収益事業に取り組んだり、物品販売を行って利益を得たとしても「所得を増大させる」ことが目的なのではなく、「公益を増進する」ために、設立が認められた団体です。ですから、得た収益を公益増進のために再配分するという条件のもとで、税制の一部優遇措置を受けることが出来ます。
社会福祉協議会も「地域福祉の増進」を目的に設置された社会福祉法人ですが、神栖市社協の場合、その運営を支える財源のほとんどは、以前のレポートでも紹介しましたが、行政からの補助・受託金(いわゆる税金。指定管理料も税金です)と、市民の皆様からの会費や寄付金で賄われています。
なので、一般事業財源確保のための収益事業というよりも、住民の利益(公益)は損なわずに経費を減らし、税金投入を押さえる努力(必要以上に補助・受託金をもらわない、不用分は返還する)が、何よりも優先されなければなりません。
さらに、経費節減努力を通して僅かでも得た収益は、会費や寄付金と合わせ、「地域福祉を推進し、公益を増進するための新しい事業」のため有効にかつ大切に使います。そして、新たに展開した事業が市民の皆様や行政から理解・評価され、協力と支援をいただければ、また新しい別の事業を考え、展開します。
この営みを継続していくことこそが、社会福祉法人としての社協の存在意義であり、将来にわたって市民の皆様や行政から支援を受け続けられる唯一の道すじだと、私は考えます。
当然、それに向けた私たちの努力は決算にも反映されている(はず)です。決算書をご覧になる時は「どれだけ収益を上げたか」よりも「収益をどう地域福祉に還元できたのか」に着目し、事業報告書と合わせて、神栖市社協の仕事ぶりをチェックしていただけると、私たちの仕事のモチベーションも上がります。
話が大きくなってしまいましたが、ここまでが、一般会計と特別会計の「資金収支計算書」の概要です。最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
なお、特別会計のところで「所得」「法人税」という言葉が出ていましたが、この資金収支計算書はあくまで資金残高を導くための計算書なので、固定資産の評価額の変動や、将来に備えた引当金の増減などは反映されません。
法人全体の財産の増減と、最終的な利益・所得(翌年度へ繰り越し可能な資産総額)をみるには、もう一つの収支計算書である「事業活動収支計算書」を作成しなければならないのですが、この計算書については、次回のレポートで詳しく説明します。
〈本所 地域福祉推進センター S〉
<※補足>
社会福祉法人の会計は、全国統一の「社会福祉法人会計基準」に基づいて処理されます。
さらに、社会福祉協議会の会計に関しては、全国社会福祉協議会より「社会福祉協議会モデル経理規程」というものが示され、そのルールの中で、日本中の社会福祉協議会が、日常仕訳や決算などを行っています。
社会福祉協議会の決算は、この「会計基準」と「モデル経理規程」により、作成すべき4つの計算書類が決められています。
1.資金収支計算書(及び内訳表)
2.事業活動収支計算書(及び内訳表)
3.貸借対照表
4.財産目録
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